物忘れがあると自分の記憶の悪さにショック受けてもう老化が始まってる!と落ち込んでしまいます。
しかし落ち込むことなかれ。
今回はそんな時に元気が出そうなお話の紹介です。
加齢による老化現象で記憶力をはじめ認知機能がだんだん衰えていってしまう不安ってあると思います。
ひと昔前までは高齢になって来ると認知機能は衰えていくもの、良くならずそのまま、仕方のないこと、というような認識でした。
(1)確かに記憶力は青年期以降加齢に伴って衰えていくものと言われていますが、語彙力や知恵を使って処理する能力などは60代くらいまで上昇していって高水準のまま維持されやすい能力と言われています。(レイモンド・キャッテル説)
(2)イギリスの心理学者レイモンド・キャッテルという方が人間の知能には「流動性知能」と「結晶性知能」の2種類があることを提唱しました。
「流動性知能」は新しい情報を取り入れ素早く適切に処理できる知能で若い内にピークを迎え下降していくのに対し、
「結晶性知能」は蓄積された情報や経験をなどを元に問題処理できる知能で高齢になってもゆるやかに成長し続けると言われています。
(3)
流動性知能 | 新しい場面に適応してスピーディーに処理する能力、計算力・暗記力・集中力・直観力など |
結晶性知能 | 既知の場面で経験や学習を駆使して処理する能力。特に言語力をベースにしたものが得意で洞察力・理解力・批判力・創造力、内省力などに優れている。 |
発達心理学の世界でも(4)「人は生涯に渡り、学習可能性―つまり環境変化に対して応答する能力を持ち続けるということ(発達の可塑性)」は広く知られている説になっているそうです。
新しいことを覚えるのが苦手になって機械は使いこなせなくても、おばあちゃんの知恵袋的な過去に覚えたことを駆使して問題解決できることは結構あるんじゃないでしょうか?亀の甲より年の功と言いますもんね。
高齢になってくると出来ないことが増えるのは当然のこと。
あまり気にしすぎると自信をなくして高齢者うつに陥ってしまうこともあるので要注意です。
老化へのネガティブなイメージでちょっとしたミスが落ち込みやすくさせるのかもしれません。
でも、(5)「自分にはできない、ダメだというマイナスのマインドが失敗を招く」ということもあるらしいですよ。
こんな実験をした話(6)があります。
記憶力の実験をするための事前に説明する内容が同じテスト内容でも
「これから記憶テストをします」と言ってから問題に答えてもらう場合と
「これから豆知識について聞いてもらいます」と言ってから問題に答えてもらう場合とでは、豆知識の方が内容をよく覚えていたという結果が出ました。
「記憶テストというだけでプレッシャーで身構えてしまいちゃんと覚えられなくなっている」んだそうです。
自信のなさが自分のパフォーマンスを落としてるということなんでしょうね。
人間は感情が動くと記憶の定着が良いので豆知識ならプレッシャーを感じず好奇心で「ん?どんなこと?聞いてみよう」となります。
するとドーパミンも分泌されて記憶定着が良くなるのではと思います。
自分の中に残っている能力はあるけど、記憶力低下やスピード低下の方にばかり囚われてしまって残った能力を発揮できなくなるのは勿体ない。
では残っている能力を活かしつつ衰えた部分をリカバリーしていく方法はあるんでしょうか?
長くなるので結晶性知能を味方にして続ける成長2に続きます。
参考:
(1)国立長寿医療研究センター「中高年者の知能の加齢変化」 http://www.rouninken.jp/member/pdf/21_pdf/vol.21_07-21-01.pdf
(2)(3)幸せな人生のためのヒント ~生涯発達心理学への誘い https://life-shift.net/talks/happiness/
(4)第 1 回アクティブ・ラーニング研究会(理論編)報告 ゆらぎとしての発達と学習 白百合女子大学教授 鈴木 忠 8頁 https://www.daito.ac.jp/cr_att/0011/40025_300242_010.pdf
(5)教育心理学年報第57集日本教育心理学会公開シンポジウム 「加齢に伴い向上・維持する能力を発掘する」336頁 https://www.jstage.jst.go.jp/article/arepj/57/0/57_329/_pdf/-char/ja