ぱくたそ
時々、香りがきっかけで昔々の記憶を思い出す、そんな体験したことありませんか?
これは、プルースト効果と呼ばれるものなのだそうで、いわば香りが引き起こす記憶のフラッシュバックのようなものらしいのです。
フランスの作家マルセル・プルーストさんの小説『失われた時を求めて』の物語の中で
主人公がマドレーヌを紅茶に浸した時の香りから子供の頃を思い出したという一節にちなんで名づけられました。
嗅覚が大脳辺縁系に直接つながるために起こる現象と考えられています。
ちなみに、大脳辺縁系は脳の本能的な行動と喜怒哀楽の感情や第六感をつかさどる所。
鼻から入ってきた匂いの情報はその情動を司る大脳辺縁系に届き海馬や扁桃核が反応するようになっています。
匂いで人の生死の判断する場面が出てくることがあるため、考えるよりも先に快・不快でとっさに判断して動いて危険を回避する仕組みになっています。
なので、香りは感情や記憶ととても結びつきやすい特性があります。
そのため、視覚や聴覚など感覚よりも嗅覚で思い出した記憶の方が感情が呼び起こされるようになります。
視覚がまだおぼつかない頃でもお母さんに抱っこされている時やミルクもらっている時の心地よさと匂いの記憶が脳に結び付けられているだと言われていて、匂いでだけでもそちらに顔を向けるそうです。
調べると福井大学医学部研究記事(1)に香りの情報が海馬へ届くときにドーパミンが放出がされていることが確認されていました。
(ドーパミンは神経伝達物質の一つで快感や多幸感を得たり意欲的になる働きがあります)
マウス実験で「甘い匂い→砂糖水を舐める」を体験させるとドーパミンが出て連合記憶(つながり記憶)の定着化が行われているのが発見されています。
ドーパミン効果すごいですね。
これがわかったことにより将来は記憶疾患の治療に繋がることが期待されているそうです。
そして結びの言葉で
「歳をとっても脳の記憶を保つためにはドーパミンを促すような美味しい、嬉しいポジティブな体験を保つことが重要である」
とも書かれていたので、記憶力強化のためのアイテムとして香りは強い味方になってくれるんじゃないでしょうか。
さらに鳥取大学医学部(2)では認知症の研究の観点から嗅覚刺激が認知症の予防や症状改善に効果があることを発見していて
既に浦上式アロマオイルという昼用と夜用のアロマ(ブレンド精油)を開発して発売もしていました。
アロマオイルの持つ芳香成分の力を借りて嗅覚を刺激→脳を活性化→嗅覚と記憶力低下が改善される→認知症予防が期待できるというものです。
(アルツハイマー認知症では記憶力の低下よりも先に嗅覚障害の症状が出ると言われています。
これは認知症の原因となる物質が脳の記憶や香りを感じる所(海馬や内嗅皮質)に溜まってしまうことで記憶と嗅覚に障害が出てしまうことが突き止められています。
もし認知症の前段階の嗅覚低下が改善されれば認知症予防になるという訳なのです。)
記憶定着するための刺激として香りが役に立つならセルフケアとしても手軽で出来ますね。
ちなみに昼用アロマはローズマリー・カンファーとレモンのブレンド(神経細胞を活性化させて認知機能の改善を促す効果アリ)
夜用アロマは真正ラベンダーとオレンジ・スイートのブレンド(睡眠の質を改善させて神経細胞の回復を促す効果アリ)でした。
記憶と香りの密接なかかわりを持つプルースト効果。
小説から名づけられたので少しロマンチックなイメージがあったのですが、アンチエイジングが期待出来る話になりました。
香りで若さを保つ脳になれると思うと俄然色んな香りを楽しみたくなってきました。
アロマオイルによらず香水でもいいし入浴剤でもいいし草花でも食事でもいい。
自分が心地よいと思う香りや匂いを取り入れて積極的に脳へ刺激与えてあげるのがよさそうですね。
大事なのは自分がポジティブになれる香りをたくさん体験してそこで動く感情もしっかり認識しておくと記憶力UPに繋がるかと思います。
ぜひ好きな香りに囲まれた生活で若々しい脳を目指してみてくださいね。
参考:
(1)匂いと記憶の世界 https://www.u-fukui.ac.jp/fukupre/78967/
(2)
「イヤとキライ」の心理学 食べ物を嫌いになる理由 https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2017/10/74-9-12.pdf
東邦大学 匂いと脳のストレス応答 https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/0824.html