
引き続きAVA血管のお話です。
熱放散について毛細血管とAVA血管があるということは前回お話したとおりです。
血管は温まると拡張して熱放散をし、寒くなれば収縮して熱が逃げないよう体の中央に血管集まるように作られています。
なので人間は暑くなると汗をかいて熱を逃すし、寒くなると手足への血流体の中央へ血を集めて熱を保とうとします。
そしてこれらの動きは自律神経の中の交感神経の支配を受けて機能しています。
AVA血管も通常は上記のメカニズムに従っているんですが、生命危機を感じると毛細血管とは逆の動きをする時があります。
(1)東大医学部内科の吉利和教授がされた実験で(冷水(0℃)へ手を入れた時の皮膚温度と酸素圧の実験)、暖かい環境で熱いお湯に手足をつけるとAVA血管は収縮されて逆に寒い環境で急激に手足を冷やすと拡張してこれを繰り返していたのだそうです。不思議ですよね。
冷やした時
通常では血管は収縮するものですが、急激に冷やされた時は
毛細血管は収縮するがAVA血管は拡張します
⇅
温めた時
通常では血管は拡張するものですが、急に熱く温められた時は
毛細血管は拡張するがAVA血管は閉じます
この相反する反応を行ったり来たりすることで血液循環を円滑にしているとのことなんです。
温度調節する機能をもってる血管たち(毛細血管とAVA血管)なのに真反対の動きをするとはこれ如何に?と思いますよね。
(2)(3)どうやらこれって人間の持ってる生体防御反応からくるもののようです。
例えば冷やされる環境に身を置いた時に通常血管は収縮します。
いくら寒い環境で熱を逃さないために血管収縮させるとはいえ、皮膚細胞にとっては代謝も落ちるし血が通わなくなるし、それじゃそのうち皮膚細胞が死んでしまう。えらいこっちゃです。(この場合、皮膚細胞くんにとっては、の話と理解してください。)
この事態を避けるため、時々勝手にAVA血管が開いて一時的血流が再開されるそうです。(!!!)
血管が開くということは、熱放散をしようとしてることになります。そして交感神経は低下状態。
全身の熱バランスのことを考えれば末端の手足より心臓の方が大事なので熱を逃さぬよう血管収縮が当然ですが、一時的に血流再開して凍傷を防ごうとする生体の防御反応と言われています。
血液循環が止まるほどの低温だと神経伝導も止まるため、血管の拡張収縮を支配する交感神経が停止してそのような動きになるのではないかということなんですね。
で、血流が再開すると体温も上がり神経活動もまともになる→まともになると本来の交感神経活動が機能して血管収縮が始まり、また手足から徐々に冷えていく、これを繰り返すそうです。
この現象、(4)「冬場に冷水で洗い物などをしていると、最初は冷たくて痛いと感じるが、そのうちに感じなくなって逆にポカポカして」くるヤツで寒冷血管拡張反応といいます。
すみません、もうちょっと続きます。
参考
(1)(2)動静脈吻合の体力医学的意義 デサントスポーツ科学 Vol.18 https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/db/seeds/descente18_01_nagasaka.pdf
(3)基礎医学教育研究会HP [045] 皮膚の動静脈吻合https://gozasso.com/kikkenlab/045-arteriovenous-anastomoses-in-skin/
(4)日本経済新聞社HP 手足の冷え防ぐ6つのコツ カギ握るは「AVA血管」https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXMZO23689110Q7A121C1000000/
東京原宿クリニックHP 自律神経の乱れに温冷交代浴が効果的https://th-clinic.com/2024/09/14/onrei/
寒さと運動・作業 神戸女子大学家政学部 平田構造 臨床環境医学(第6巻第1号P14~18 1997)https://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/mc/healthy/jsce/jjce6_1_14.pdf